【コラム】養育費に関する民法改正

前回に引き続き、令和6年5月17日に成立した父母の離婚後等の子の養育に関する民法等改正法に関して、養育費に関する改正項目についてご紹介します。

 

今回の法改正により、新たに「法定養育費」の制度が民法に新設されました。

 

改正後の民法第766条の3

「父母が子の監護に要する費用の分担についての定めをすることなく協議上の離婚をした場合には、父母の一方であって離婚の時から引き続きその子の監護を主として行うものは、他の一方に対し、離婚の日から、次に掲げる日のいずれか早い日までの間、毎月末に、その子の監護に要する費用の分担として、父母の扶養を受けるべき子の最低限度の生活の維持に要する標準的な費用の額その他の事情を勘案して子の数に応じて法務省令で定めるところにより算定した額の支払を請求することができる。ただし、当該他の一方は、支払能力を欠くためにその支払をすることができないこと又はその支払をすることによってその生活が著しく窮迫することを証明したときは、その全部又は一部の支払を拒むことができる。

一 父母がその協議により子の監護に要する費用の分担についての定めをした日

二 子の監護に要する費用の分担についての審判が確定した日

三 子が成年に達した日」

 

このように、今回の改正によって、離婚時に養育費について具体的な取り決めをしていなくても、子の身の回りの世話を行っている父母の一方は、他方の父母に対し、この条項に基づいて一定の養育費の支払を請求することができるようになります。

また、今回の改正によって、子の監護の費用(養育費等)に先取特権という優先権が付与されることになりました(改正後の民法306条3号)。

この法定養育費や先取特権が付与される養育費の具体的な額は、今後、法務省令で定められる予定となっています

 

法定養育費は、「子が最低限度の生活の維持に要する標準的な費用」等を勘案して定められるため、あくまで補完的な制度であり、父母の協議や家庭裁判所の手続によって具体的な養育費の額の取り決めを行うことが重要であることはこれまでと変わりませんが、今後、離婚をする際には、法定養育費制度が新設されたことを父母ともに認識しておく必要があると思います。

なお、法定養育費の規定は、改正法が施行された後に離婚した場合にのみ適用されるため、改正法が施行される前に離婚した場合には、法定養育費は請求できないことには注意が必要です。