本日、午前9時59分に鹿児島県・口永良部島の新岳が爆発的な噴火をしました。
水蒸気噴火ではなくマグマ噴火の可能性もあり、火砕流も発生したとのことでしたが、幸い男性の方が一名軽いやけどを負われただけで、島民の方の安全は確保されているとのことで一安心しました。
ご存じのとおり、我が国は火山国ですので、火山活動は日常のこと(なはず)ですが、やはり東日本大震災後、にわかに火山活動が活発になってきていると素人目にも思える状況です。御嶽山の悲劇は記憶に新しいところですし、一番近いところでは箱根・大涌谷周辺での火山活動の活発化が連日報道されてきました。マグニチュード9以上の大地震が発生した後には必ず大規模噴火が発生するとの科学的データもあるようですし、今後とも予断を許さない状況であるといえます。
特に九州は、南北に霧島火山帯、東西に大山火山帯がかかっており、霧島火山帯は世界でも有数のカルデラが多く存在する火山帯です。代表的なものでも、北から阿蘇カルデラ、加久藤カルデラ、姶良(あいら)カルデラ、阿多カルデラ、鬼界カルデラが連なっており、口永良部島は鬼界カルデラからさらに南に位置する島で勿論、霧島火山帯に含まれます。それぞれのカルデラの主たる火山としては、阿蘇山、霧島山、桜島、開聞岳、薩摩硫黄島がありますが、このうち、開聞岳、薩摩硫黄島を除く全てが噴火警戒レベル2(火口周辺規制)以上(桜島がレベル3(入山規制)、霧島山は新燃岳でレベル2)で、薩摩硫黄島も昨年7月まではレベル2でした(ちなみに口永良部島は昨年8月の噴火時にレベル3に引き上げられ、今回の噴火でレベル5(避難)にさらに引き上げられました)。従前より活発な火山活動がある地域ですが、全体としてさらに活発になってきており、厳重な警戒が必要です。
さて、このような活火山の火山活動に関しては、「活動火山対策特別措置法」(略称:活火山対策特措法、マスコミでは活火山法などと言われます)が制定されています。
同法は「火山の爆発その他の火山現象により著しい被害を受け、又は受けるおそれがあると認められる地域等について、避難施設、防災営農施設等の整備及び降灰除去事業の実施を促進する等特別の措置を講じ、もつて当該地域における住民等の生命及び身体の安全並びに住民の生活及び農林漁業、中小企業等の経営の安定を図ることを目的とする。」(第1条)ものであり、まさしく今回の噴火にも適用されるものです。
同法については、御嶽山の悲劇が起きたことを受けて、その改正が議論されておりましたが、今回の噴火と軌を一にして、その改正案の閣議決定が本日為されました。偶然の一致ですが、火山活動に対する安全対策は喫緊の課題であり、法律上の対応も早急に進めていかなければならないことを如実に示したものと言えます。
詳しい改正内容については各マスコミ報道を参照して頂ければと思いますが、ポイントは常時観測が行われる(行われている)火山の周辺市町村において、「火山防災協議会」を設置し、避難計画の作成などを義務づける内容となっています。
http://mainichi.jp/select/news/20150529k0000e040276000c.html
常時観測火山は50火山(現在47火山)となりますが、口永良部島もこれに含まれています(なので、噴火時の監視カメラの映像を我々見ることができました)。
今後は、同法改正が国会で可決されることにより、可及的速やかに火山活動に対する防災対策がさらに進むことになると思いますが、今回の口永良部島・新岳の噴火からも明らかなとおり、待ったなしの状況です。住民の安全のためにも各周辺自治体における速やかな対応が重要になります。
(弁護士 柴山将一)