パワハラという言葉自体を聞いたことがないという方は少ないのではないでしょうか。
しかし、具体的にどういった行為がパワハラに当たるかと聞かれると、漠然とはイメージできるものの、明確にはよくわからないという方もいらっしゃるのではないかと思います。そこで、今回はどのような場合に違法と評価を受けるパワハラに該当するかを考えてみたいと思います。
パワハラとはパワーハラスメントの略語で、同じ職場で働く者に対して職務上の地位や職場における人間関係の優位性を背景に、業務の適正な範囲を超えて、精神的・肉体的苦痛を与える行為などと定義されます。
会社も組織である以上、部下の業務に問題があれば、上司が注意をするのは当たり前のことですが、度を超すと違法な人格権侵害として損害賠償請求を受けることもあります。
どこまでが注意・指導の範囲として許されるかは法律に明確に定められているわけではありませんが、概ね、①動機・目的が正当か否か、②内容が通常の注意・指導の範囲と言えるか、③当該行為が通常甘受すべき不利益の程度を越えているか等の基準により判断されると言われています。
例えば、退職目的の仕事外しなどは、①~③の全てに該当し明らかに違法との評価を受けるでしょう。
また、東京高裁平成17年4月20日判決は、上司が部下に送信した「意欲がない、やる気がないなら会社を辞めるべきだと思います。当課にとっても、会社にとっても損失そのものです。あなたの給料で業務職が何人雇えると思いますか。あなたの仕事なら業務職でも数倍の業績を挙げていますよ。」とのメールについて、違法と判断しました。微妙な事例だとは思いますが、一昔前は上司が部下に対して当たり前に行っていた行為も、今では違法なパワハラと評価される時代になりつつあることは確かではないでしょうか。
部下を持つ方は指導方法に十分気をつけられた方が良い時代になってきました。