平成30年7月6日、民法及び家事事件手続法の一部を改正する法律(平成30年法律第72号)が成立しました(同年7月13日公布)。
民法のうち相続法の分野については、昭和55年以来、実質的に大きな見直しはされてきませんでした。しかし、社会の少子高齢化の進展、相続開始時における配偶者の年齢の相対的な高齢化等に鑑み、配偶者の保護の必要性を中心に改正の必要性が議論されてきました。
今回の改正は、このような社会経済情勢の変化に対応するものであり、原則として、2019年(令和元年)7月1日から施行されます。
しかし、自筆証書遺言の方式を緩和する方策については、2019年(平成31年)1月13日から施行されています。そこで、本稿では、この方策についての改正概要をみていきたいと思います。
第九百六十八条 自筆証書によって遺言をするには、遺言者が、その全文、日付及 び氏名を自書し、これに印を押さなければならない。
2 前項の規定にかかわらず、自筆証書にこれと一体のものとして相続財産(第九百 九十七条第一項に規定する場合における同項に規定する権利を含む。)の全部又は一 部の目録を添付する場合には、その目録については、自書することを要しない。この 場合において、遺言者は、その目録の毎葉(自書によらない記載がその両面にある場 合にあっては、その両面)に署名し、印を押さなければならない。
3 自筆証書(前項の目録を含む。)中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所 を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に 印を押さなければ、その効力を生じない。
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改正の概要としては、上述の下線を引いた第968条2項が新設され、従前の同条2項の規定は、同条3項に規定されることとなりました。
この改正は、全文の自書を要求している現行の自筆証書遺言の方式を緩和し、自筆証書遺言に添付する財産目録については自書でなくてもよいものとしたものです(ただし、財産目録の各頁に署名押印することを要します)。
自筆証書に、パソコン等で作成した目録を添付したり、銀行通帳のコピーや不動産の登記事項証明書等を目録として添付したりして遺言を作成することができるようになり、財産目録も手書きでしなければならなかった被相続人の負担が大幅に軽減されます。そして、財産目録には署名押印をしなければならないので、偽造も防止できます。
以上より、この改正は、遺言の利用を促進し、相続をめぐる紛争を防止する等の観点でメリットがあり、遺言手続の煩雑さを軽減するという意味で、意義のある改正であると考えられます。
遺言などの相続法の分野について、不明な点や不安な点がある場合には、当事務所までご相談ください。