本年9月8日~9日にかけて、台風15号が非常に強い勢力で関東地方を直撃し、千葉県を初めとする各所に大きな被害をもたらしました。
そこで、災害により生じた損害、例えば隣家の屋根瓦が吹き飛ばされて、自分の家の外壁に損傷が生じた場合、隣家の所有者に損害賠償請求が可能かという問題について考えてみたいと思います。
まず、第三者との法律関係による一般的な規定としては、故意または過失により他人の権利を侵害した場合の損害賠償責任を定める不法行為責任(民法709条)があります。また、土地の工作物の瑕疵により第三者に損害を生じさせた場合の規定として、工作物の所有者ないし占有者に対する工作物責任の規定(民法717条1項)があります。そして、民法717条1項の「瑕疵」とは、工作物が通常有すべき安全性を欠いていることいいます。
心情的には隣家の所有者に自宅外壁の修理費を負担して欲しいところですが、法律的には、隣家の所有者に故意又は過失があるか、建物に瑕疵が無ければ請求は出来ないということになります。一方で、隣家の所有者の立場からすると、台風時に発生した損害であるからといって、一律に損害賠償責任を免れるということにはならず、過失や瑕疵がある場合は、賠償責任を負うことになります。
瑕疵の有無の認定に当たっては、
① 当該台風の大きさ、強さ、被害発生時の風速
② 当該建物の状況、築年数、修繕の有無等
③ 当該地域付近において、過去に同様の事故・被害はあったか、
④ 当該地域付近において、本件台風による被害はどの程度であったか、
⑤ 事前の対策が可能であったか、実際にどの程度の対策を行っていたか、
等、多くの事実関係を確認した上で総合的な判断をすることになるため、結論は簡単には出ませんし、裁判例の中には、自然災害と瑕疵が競合して被害が発生したとして、100か0の判断ではなく割合的な賠償を認めたものもあるため、いずれの立場であっても、専門家へご相談をされた上で慎重なご対応をされることをお勧め致します。