平成29年6月、東名高速道路において、あおり運転による死亡事故という痛ましい事故が起きました。また、今年に入ってからも、あおり運転の被害が多く報道されています。
あおり運転について明確な定義はありませんが、具体例として、車間距離を詰める、幅を寄せる、蛇行する、クラクションやハイビーム等での威嚇が挙げられます。
このように、昨今問題視されているあおり運転ですが、あおり運転を起こした者は、法的にどのような罰則を受ける可能性があるのでしょうか。
まず、あおり運転の多くは、「車間距離保持義務違反」という道路交通法違反として扱われることが多いです。
(車間距離の保持)
第二十六条 車両等は、同一の進路を進行している他の車両等の直後を進行するときは、その直前の車両等が急に停止したときにおいてもこれに追突するのを避けることができるため必要な距離を、これから保たなければならない。
(罰則 第百十九条第一項第一号の四、第百二十条第一項第二号)
そして、上記道路交通法違反の罰則として、高速道路での違反の場合は、3ヶ月以下の懲役または5万円以下の罰金、一般道路での違反の場合は、5万円以下の罰金となります。社会問題となっている現状に鑑みると、行為の悪質さに見合った罰則と言えるか疑問の余地があります。
また、人を死傷させた場合、刑事事件として立件されれば、過失運転致死傷罪(7年以下の懲役若しくは禁錮又は100万円以下の罰金)や危険運転致死傷罪(傷害:15年以下の懲役、死亡:1年以上の有期懲役)が適用されることもあります。直接の暴力行為がなくとも、相手に恐怖心を与えたとして暴行罪(2年以下の懲役若しくは30万円以下の罰金または拘留若しくは科料)や強要罪(3年以下の懲役)が適用されることもあります。
しかし、ドライブレコーダーの映像等の客観的資料が不足し、証拠が揃っていない場合、上記道路交通法違反の限度でしか制裁を受けないケースもあるのが現状です。
このような状況を踏まえ、あおり運転の新たな法規制に関し、今秋の臨時国会への法案提出が検討されているという報道もなされています。法律家としても、今後の法整備の推移を注視していきたいと思います。