2020年1月31日付けのコラムでは,名義を貸与したことにより,法的な責任が発生してしまう場合についてご紹介させていただきました。
今回は,離婚した妻(下記B)の連れ子(下記C)が起こした事故について名義人(車検証上の使用者)である旦那(下記A)が法的な責任を負うかについて検討してみたいと思います。
さて,今回の検討対象となる裁判例は,大阪地判平成30年7月18日のもので,下記のような事案でした。
① Aは平成20年2月28日,Bと婚姻した後,同月29日,B宅に住民票上の住所を移し,Bとの同居を開始した。
② もっとも,Aは船員として1年の大半を洋上で過ごしていたため,B宅に帰るのは,航海と航海の間の短期間のみであり,その期間は1年で合計しても1ヶ月ないし2ヶ月程度であった。
③ Bには,前夫との間の子がいたが,その内のCについては,既に独立した上,B宅に帰省することもなかったため,AはBと同居していた間,Cと会ったことはなかった(AとCとの間に血縁関係及び養親子関係はない)。
④ Aは,主にBが日常使用するために,平成22年2月頃,A名義で自動車ローンを組んだ上で,Bが選定した本件車両を購入した。
⑤ 本件自動車の自動車保険の契約者もAであり,保険料の支払いもAが行っていた。なお,本件自動車保険には,35歳未満の者が運転中に事故を起こした場合には,保険金の支払いができないという運転者年齢条件の特約が付されていた。
⑥ 本件事故の約1ヶ月前である平成24年7月28日には,Aは本件車両とその鍵をBの下に残したまま,Bとの離婚を前提に別居した。その後の離婚調停の席においても,本件車両をBが使用することが確認された。それ以後,AはBと会っておらず,本件車両を使用してもいない。
⑦ 平成24年8月25日,CはBから鍵を借りて本件自動車を運転したところ,Xが運転する普通乗用自動車と衝突し,Xが受傷した。なお,Cは本件事故当時,自動車運転免許を有していなかった。
⑧ XはAに対して,自動車損害賠償法3条に基づき損害賠償請求を行った。
以上の事実関係を前提に,裁判所は,客観的外形的に見て,Aが,Cによる本件車両の運行を支配・制御し得る立場にあったとはいえず,Cが被告車を運行することを容認していたといわれてもやむを得ない事情があるともいえないとして,Xに対して損害賠償責任を負わないとの判断を下しました。
2020年1月31日付けのコラムで紹介させていただいた事案と比較すると,双方共に,名義人となっているだけで,事故車両を主として使用していないという点については共通しています。
しかしながら,双方の結論は異なることになりました。
2つの類似する裁判例を比較するだけでも分かるように,法的な判断には,専門的な知識が必要となります。
ご不明な点やご不安がある場合には,当事務所までご相談ください。