【コラム】民法上の懲戒権

 近年、児童虐待問題が社会問題となっていることを背景として、令和2年4月1日から、親権者による体罰禁止等を定めた改正児童虐待防止法及び改正児童福祉法が施行されました。

 一方で、民法822条では、以下の通り、親権者に懲戒権が認められております。

 同条の「懲戒」の意義に関しては、親権者による子の看護教育上から見て子の非行・過誤を強制善導するために、その身体又は精神に苦痛を加える制裁であると考えられております。

 また、同条の「必要な範囲」を逸脱した場合、民法上は親権濫用として親権喪失の原因となるほか、子に対する不法行為による損害賠償責任を負う可能性もありますが、その範囲については、その時代の一般社会通念により決せられるとされており、定義は不明確なものとなっております。

 これらを踏まえ、令和2年2月4日に開催された法制審議会民法(親子法制)部会第6回会議では、①懲戒権の行使として体罰が許容されるかが依然不明確であること、②懲戒権に関する規定が、体罰を正当化する口実とされていること、についての指摘がされるに至り、令和3年2月9日に開催された同部会第14回会議では、「懲戒」名目での虐待防止のため、以下の通りの中間試案がまとめられました。

 以上のように、現行民法上では、懲戒の「必要な範囲」についての判断が難しいところ、法制審議会において、民放822条の改正に向けた検討が開始されております。法律家としても、今後の推移を注視していきたいと思います。