【コラム】 所有者不明土地問題の解決に向けた法改正

 国土交通省によると、国内の土地の22%が所有者不明土地であり、その大きな原因は、相続登記や住所変更登記がなされていないことにあるようです。

 所有者の所在等が不明の場合には土地が管理されず放置されることが多くなり、公共事業が円滑に進まず、民間取引も阻害されるなど、土地の利活用が阻害されます。また、土地の管理不全化が進行すると、隣接する土地への悪影響も発生します。  このように、所有者不明土地問題の解決は緊急の課題といえます。

   これらの課題に応える形で、令和3年4月21日、「民法等の一部を改正する法律」(令和3年法律第24号)及び「相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律」(令和3年法律第25号)が成立しました(同月28日公布)。 両法律は、所有者不明土地の「発生の予防」と「利用の円滑化」の両面から、総合的に民事基本法制の見直しを行うものです。

 本稿では、これらの法整備に関する重要な点をピックアップして確認していきたいと思います。

 <発生の予防>

① 不動産取得相続人に対する相続登記の申請の義務化

② 登記名義人の死亡等の事実の公示

③ 氏名・住所の変更日から2年以内の変更登記申請の義務化

④ 土地所有権の国庫帰属制度の創設 

 ①により、土地所有者の探索にかかる時間と費用を減らすことができます(改正不動産登記法76条の2第1項)。

 ②により、登記で登記名義人の死亡の有無の確認が可能になります(改正不動産登記法76条の4)。

 ③により、転居や本店移転等に伴う住所等の変更が簡便な手続で登記に反映されます(改正不動産登記法76条の5)。

 ④により、土地を相続したけれども手放したい者のニーズに応えることができ、土地を望まず取得した所有者の負担や管理の不全化を防止することができます(相続土地国庫帰属法・新設) 

  <利用の円滑化> 

 ① 所有者不明土地・建物に対する管理命令の創設

 ② 不明共有者を除いて共有物の変更・管理行為を可能にする制度の創設

 ③ 長期間経過後の遺産分割の見直し

 ④ ライフラインの設備設置権等の規律の整備 

 ①につき、裁判所が管理命令を発令して管理人を選任する制度が創設され、所有者不明土地等の適切な管理が可能となります(民法264条の2第1項等)。

 ②により、不明共有者がいても共有物の利用・処分を円滑に進めることができます(改正不動産登記法76条の2第1項)。

 ③につき、相続開始から10年を経過した時は画一的な法定相続分で簡明に遺産分割を行うこととなり、遺産分割長期未了の状態を解消できます(民法904条の3)。

 ④により、ライフラインの引込みを円滑化し、土地の利用を促進できます(民法213条の2第1項等)。

  以上より、本件改正は、高齢化の進展による死亡者数の増加等により、今後ますます深刻化するおそれのある所有者不明土地問題の解決に資するという意味で、意義のある改正であると考えられます。法律家としても、さらなる法整備の推移を注視していきたいと思います。 

【参照】法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)」http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html