【コラム】民事訴訟のIT化等

 令和4年5月18日、「民事訴訟法等の一部を改正する法律」(以下、改正法といいます)が成立し、同月25日に公布されました。

 改正前民事訴訟法ではITの活用は限定的でしたが、今回の改正により、民事訴訟の全面的なIT化が進むこととなりました。また、住所・氏名等の秘匿等の制度が創設されることとなりました。

 その概要は以下のとおりです。

 

1 インターネットを利用した申立や提出

  これまで、訴状を持参または郵送で裁判所に提出する方法で訴えの提起が行われ、準備書面など一部の書面について郵送等に加えファクシミリによる提出が認められていました。

  しかし、今回の改正により、訴状や準備書面の提出等をインターネット上において行うことが出来るようになり(改正法132条の10第1項等)、裁判所からの送達もインターネットを通じて行うことが出来るようになります(改正法109条等)。

 

2 ウェブ会議や電話会議を利用した手続への参加

  これまで、口頭弁論期日は当事者双方の出頭が必要とされていましたが、今回の改正により、ウェブ会議の方法により期日に出席することが出来るようになります(改正法87条の2第1項)。

  また、弁論準備手続をウェブ会議や電話会議により行うためには、当事者が遠隔の地に居住等していることが要件であり、期日では当事者の一方は出頭しなければならないこととされていましたが、今回の改正により、遠隔地に居住等していなくても、当事者双方ともにウェブ会議や電話会議による期日を行うことが出来るようになります(改正法170条3項)。その他、証人尋問や和解期日についてもウェブ会議の方法により行うことが出来るようになります(改正法89条2項等)。

 

3 訴訟記録の電子化・インターネット利用による閲覧等

  これまで、訴訟記録は紙媒体で保管されることとなっていましたが、今回の改正によって、訴訟記録は原則として電子データで保管されることとなり(改正法132条の12等)、当事者は裁判所のサーバにアクセスして、訴訟記録の閲覧等が出来るようになります(改正法91条の2等)。

 

4 住所・氏名等の秘匿制度の創設

  これまで、訴状等には原告の住所・氏名等を記載することが必要であったため、性犯罪やDV等の被害者が自己の氏名等を相手方に知られることをおそれ、訴えの提起を躊躇してしまうのではないかという指摘がされていました。

  そこで、今回の改正により、一定の場合には、住所・氏名等の情報を秘匿したまま民事訴訟手続を進めることが出来るようになりました(改正法133条1項)。

 

5 法定審理期間訴訟手続の創設

  これまで、民事訴訟法には審理期間の定めがありませんでしたが、今回の改正により、当事者双方の申出・同意があれば、手続開始から6月以内に審理を終結し、そこから1月以内に判決をするという制度が創設されました(改正法381条の2等)。

 

 改正内容は公布日から4年以内の期間に段階的に施行されることとなっていますが、今回の改正により民事訴訟の迅速化が進み、遠方の裁判所における訴訟対応もより行いやすくなるものと考えております。当事務所は、全国の裁判所での訴訟について積極的に取り組んでおりますので、訴訟をご検討の方はご相談いただければと思います。

【参照】

法務省「民事訴訟法等の一部を改正する法律について」

改正の概要(PDF)

https://www.moj.go.jp/content/001386866.pdf