この度、「労働基準法施行規則」(以下「労基則」といいます。)、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準」(以下「基準」といいます。)の改正により、労働条件の明示事項等が追加されることとなりました。
施行日は、令和6年4月1日になります。
令和6年4月1日以降に契約締結・契約更新をする場合に適用対象となりますので、経営者や労務担当の皆様はご注意ください。
新たに明示や説明が必要となった事項は以下のとおりです。
1.就業場所と業務の変更の範囲(改正労基則5条1項1号の3)
対 象 者:すべての労働者
時 期:労働契約の締結時、有期労働契約の更新時
明示事項:就業場所と業務の変更の範囲
※具体例は厚労省作成のパンフレット等に複数の記載がありますので是非ご参照下さい。
厚生労働省HP:https://www.mhlw.go.jp/content/11200000/001156048.pdf
■就業場所・業務に限定がない場合
(雇入れ直後)仙台営業所 (変更の範囲)会社の定める営業所
(雇入れ直後)広告営業 (変更の範囲)会社内での全ての業務
■就業場所・業務に限定がある場合
(雇入れ直後)東京本社 (変更の範囲)東京本社、大阪支社及び名古屋支社
(雇入れ直後)商品企画 (変更の範囲)本社における商品又は営業の企画業務
(ただし出向規程に従って出向を命じ
ることがあり、その場合は出向先の定
める業務)
2.更新上限(改正労基則5条1項1号の2、改正基準1条)
対 象 者:有期契約労働者
時 期:有期労働契約の締結時、有期労働契約の更新時
明示事項:更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無とその内容
説明事項:更新上限を新設・短縮する場合は、その理由
※更新上限の例としては、「契約期間は通算4年を上限とする」「契約の更新回数は3
回まで」など。
※説明方法に限定はありませんが、厚労省のパンフレットでは、「文書を交付して個々
の有期契約労働者ごとに面談等により説明を行う方法が基本」と記載されています。
※説明は、あらかじめ(更新上限の新設・短縮をするタイミングで)行う必要がありま
す。
3.無期転換申込機会(改正労基則5条5項、6項、改正基準5条)
対 象 者:有期契約労働者
時 期:無期転換申込権が発生する有期労働契約の更新時
明示事項:①無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)
②無期転換後の労働条件
説明事項:無期転換後の賃金等の労働条件を決定するに当たって他の通常の労働者(正社
員等のいわゆる正規型の労働者及び無期雇用フルタイム労働者)とのバランス
を考慮した事項(例:業務の内容、責任の程度、異動の有無・範囲など)
※努力義務
概要のみですが、改正の内容は以上です。
労働関係法令及び基準等の改正は頻繁に行われており、また改正の度に複雑化しています。
経営者の皆様としては、「いつの間にか改正されていた。」、「改正は知っていたが、いつまでに対策しなければならないのか分からなかった。」、「何回も書式を変えたり就業規則を変えたりしているうちに付いていけなくなった。」といった事態になり、ふとしたきっかけで労基署から指摘を受けることのないよう、こまめに専門家に相談されることをお勧め致します。
以 上
※本コラムは、令和6年1月16日時点における情報を基に作成しております。
作成者:弁護士 西原宗勲