【コラム】電動キックボードとペダル付き電動スクーター(モペット)の取扱いについて

 昨今、街中でいわゆる電動キックボード(「LUUP」*1など)を目にすることが増えたように思います。

  電動キックボード等の電動モビリティについては、令和5年7月1日施行の改正道路交通法により規律が設けられましたので、ここで改めて、電動キックボード等に関する法的位置付けや規律を確認してみたいと思います。
 
*1 https://luup.sc/
 
1 特定小型原動機付自転車
    令和5年7月1日施行の改正道路交通法(以下「法」といいます)では、新たに「特定小型原動機付自転車」という区分が規定され、電動キックボードについては法所定の要件を満たす場合、「特定小型原動機付自転車」として公道の通行が認められています(法2条1項10号ロ、17条3項)。そして、上記区分が設けられたことにより、従来の原動機付自転車は「一般原動機付自転車」と規定されることとなりました(法2条1項10号イ、18条1項)。
    特定小型原動機付自転車として取り扱われるためには、以下の基準を全て満たすことが必要となります。
    ・車体の大きさは、長さ190センチメートル以下、幅60センチメートル以下であること
  (道路交通法施行規則1条の2の2第1号イ、ロ)
    ・原動機として、定格出力が0.60キロワット以下の電動機を用いること(同条第2号イ)
    ・時速20キロメートルを超える速度を出すことができないこと(同号ロ)
    ・構造上出すことができる最高の速度を複数設定することができるものにあっては、走行
   中に最高速度の設定を変更することができないこと(同号ハ)
    ・オートマチック・トランスミッション(AT)機構がとられていること(同号ニ)
    ・最高速度表示灯が備えられていること(同号ホ)
    また、特定小型原動機付自転車の運行にあたっては以下の事項が必要となります。
    ・前照灯や警音機、方向指示器等の道路運送車両法上の保安基準に適合していること
    ・自動車損害賠償責任保険(共済)へ加入していること
    ・標識(ナンバープレート)を取り付けていること
    
2 特定小型原動機付自転車とそれ以外の原動機付自転車との交通ルールの違い
    特定小型原動機付自転車の交通ルールには、一般原動機付自転車と比べ、主に以下のような違いがあり、主に、運転免許のない人でも運転することができるといった特長があります。
    ・運転免許がなくても運転できること(法64条、84条1項)
    ・ヘルメットの着用は努力義務に留まっていること(法71条の4第3項)
    ・普通自転車通行帯及び自転車道を通行できること(法17条3項)
    ・特定小型原動機付自転車の販売・貸渡しをする事業者は、購入者または利用者に対し、
   安全な運転を確保するために必要な交通安全教育を行う努力義務があること(法108
   条の32の4)
 
3 ペダル付き原動機付自転車(モペット)の取扱い
    電動キックボードの他にも、電動スクーターにペダルが付いた車両や、ペダルを漕ぐことなくモーターの動力のみで走行することが出来る自転車が流通し、街中で見かけることも多くなってきたように思います。これらは一般に、「ペダル付き原動機付自転車(モペット)」と呼ばれています(以下「モペット」といいます)。
    モペットは、ペダルを漕いで走行することだけではなく、ペダルを漕がずにモーターの動力のみで走行することができるため、法律上は一般原動機付自転車に区分され、一般原動機付自転車の規律に服することとなっています。
    もっとも、モペットについては、ペダルのみでも走行が可能である上、市場において「電動アシスト自転車」という名称で販売されている場合もあるため、法律上、一般原動機付自転車に該当することを知らなかったり、「モーターの動力を使わずペダルのみを用いて走行する場合には自転車として扱われる」といった誤った認識を持つ人も散見される状況となっていました。
    このような中、令和6年5月17日、改正道路交通法が成立しました。
    この中で、いわゆる「青切符」の導入等、自転車の運転に関する規律が整備されるとともに、原動機に加えてペダル等を備えている原動機付自転車等(モペット)をペダル等を用いて走行させることについて、原動機付自転車等の運転に該当することが明確化されました。
    これにより、モペットについては、モーターの動力のみで走行することはもちろん、ペダルを用いて走行することについても、原動機付自転車等の運転に該当することが明確となったため、誤った認識を持つ人も減っていくことと思います。
  (参考:https://www.npa.go.jp/laws/kokkai/20240305-01/05_sankoushiryou.pdf)
 
4 原動機付自転車と自動車保険
    原動機付自転車にはどのような保険があるでしょうか。
    まずは、自動車損害賠償責任保険(共済)への加入が義務づけられているほか(自動車損害賠償保障法5条、2条1項)、自動車保険(任意保険)への加入も推奨されております。
    また、現在、各損害保険会社の自動車保険において、そのほとんどに、原動機付自転車を使用中等に生じた事故を補償する特約である「ファミリーバイク特約」が用意されており、自動車の保険契約がある場合、ファミリーバイク特約に加入することで、原動機付自転車を運転中の事故についても補償の対象となります。
    特定小型原動機付自転車が関係する問題についても弊所へご相談いただければと思います。